思考実験室

日々のつれづれ

過疎現場から得たものを

TOKYO IDOLISM、2日目に参加しました。

セトリおばさんが今日も仕事してくれてます。

 

 

語るのは野暮なんだけど、1曲目のassuage、幅広い楽曲を誇るハルモニーだからこそ、こういう芸もできる。ワンマンの告知で滑り倒したけど、実際は楽曲派で、歌唱力も高い。というか、1、2、3曲目、ともに難しい曲なので、これをさらっとやるハルモニー、地味に凄いんですよ。知っている人しか、伝わらないことなのだけれど。

 

で、最後が「国王」でした。

 

 

正直、過疎現場すぎてやばかったのですが、だからこそ魅せ方を考えて、セトリを組むハルモニーほんっと凄いなと思った次第でございます。

 

(あと、クマリがありえん可愛くて、なんとなくサイリウム持って行こうと思って持って行ったらさおてゃんに使えて良かったです、以上)

ワンマンライブ Bring It On Down @WWW X

会場にはギリギリ10分前、フロアは満員とまでは行かないけれども、前方から後方まで、ある程度の人がいた。おそらく、どっかの現場を干してきたんであろう、例えば盟友せのしすたぁの帽子をかぶったオタクもいたし、主現場ではない人も、このライブを楽しみにしてたんだと思う。

 

照明が暗くなり、「Bring It On Down」がスクリーンに映し出される。 「Bring It On Down」は見ての通り、渋谷駅から渋谷WWW Xへと行くまでの映像が入っている。 そして「Bring It On Down」の再生が終わった後に、控え室からステージへと向かう映像をスクリーンに映し出され、メンバーがようやく登場する。

 

セトリはあんまり覚えていない。 と言うか正直知らない曲も多かったので、セトリが書けない。 と言うか、僕はライムベリーは好きだし、動向もチェックしたりしてるけど、頻繁に通うほどのファンじゃない。のだけれど、知らない曲を多くても楽しめるライブだった。そういうライブが出来るグループは本当に貴重だと思う。そんなお客さんでも楽しませられるアイドルグループは貴重だと思う。

 

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「HAPPYLUCKY」やTARGERTでは音に合わせ飛び跳ねたり、すごく楽しい。「because of you」や「Fly High」のようなしっとりとしつつも聞き入れる曲たち。 そして「MIRRORBALL」ではフロアがごちゃごちゃになり、モッシュが起こる。続けて「韻果録」ではフロアは最高潮に。

 

メンバーのことについても少し書こうか。

 

DJ OMOCHI、フロアを盛り上げ役として彼女が入ってくれて良かった。いい意味でも、悪い意味でもぐちゃぐちゃにかき乱す。 もっとDJが出来るようになったら、あっと言わせられると思う。だから、すっごく今後に期待してる。

 

MC MISAKI、1ヶ月ほどお休みして、その間に、OMOCHIちゃん、MIRIちゃんの二人の動画を見たりもしたのだけれど、 やっぱり彼女の声が必要なんだと今回のワンマンで感じた。お世辞にもラップスキルは高くはないけれど、彼女のふわふわとした フロウが、ライムベリーをアイドルグループに繋ぎ止めるためにある。「because of you」はかなり好き。

 

MC MIRI、圧倒的なラップスキルは、ラップアイドル界でも屈指の実力で、のみならずパフォーマンスも秀逸だと思う。 客への煽りも、立ち振る舞いも、アドリブも、それが自然にできているから秀逸なんだと思う。 パンチがあってキレもある声で、早いラップを繰り広げる。彼女がいるからこそ、ラップアイドルグループとして、他のグループとは一つ飛び抜けていることを実感出来る。

 

ライブに行ったことがなくても、極上なサウンドとフロウを聞きながら、体を動かすことが出来る。ただただカッコイイ、それだけでいいじゃないか。たぶん、今そう感じさせられるアイドルグループのうちの一つが、ライムベリーなんだと思う。

Hauptharmonie『Herz über Kopf』を聴いて

言わずと知れた通り、Hauoptharmonieは高い楽曲性、音楽性はアイドルファンのみならず早耳な音楽ファンにも一定の評価を受けている。1stフルアルバム『Hauptharmonie』はUKロック、スカ、ジャズを主軸にしつつ、渋谷系サウンドも取り入れた楽曲もある、射程の広い一枚となっている。リードトラックとなっているギターポップな「映ゆ」から始まり、「(the garden was alive with) all sorts of flowers」と"耳障りの良い曲"が続いた後に「Tempting 10 Attempts of Temperance」のようなスカした曲、「ナイトプロポーズ」のようなしっとりとした聞かせる曲といった編成からはじまっていく。先に4曲を挙げたが、全16曲(truck1はintroなので実質15曲)あり、捨て曲が一切なく『名盤』と言われる所以は、ひとえにプロデューサーのO-antによる音楽への深い造詣とその手腕があってこそなのだと思われる。

さて、『名盤』と評価される1stフルアルバムを出して後に放つ2ndフルアルバムは、それだけに世間の期待度も大きいものである。開口一番放つは「BUDDY」。作詞がHauptharmonieとなっていることにも注目に値する。

Hello! Projectになりたい T-paletteの仲間入りがしたい BABY METALももいろクローバーZPerfumeのように凛としたい <<

のように固有名詞を挙げて、自身の置かれた状況に対する皮肉めいた歌詞。 そうしたくても出来ない、資本力知名度、地下アイドルと言う現実。中でも初期メンバーの寺田珠乃の、

良い子にしててもいいことなかった ううん、良い子にするほど馬鹿を見たんだ <<

と言うセリフは、当初のコンセプトである「仲睦まじく行儀良く」から真っ向に対峙するものである。 恨み節乗せて歌うブルースにあわせ、メンバーたちが淀み濁った気持ちをセリフで吐く。 無垢を目指すも届かずに、汚れていく心を知る。

・・・

「Kidnapper Blues〜人攫いの憂鬱〜」、「パラレルワープ」、「LAST CHANCE(幸福の妨げ)」は語らなくとも良いだろう。 「Alice in Abyss」、これはプロデューサーが語るように酷い歌詞ではあるが、とりわけ寺田の歌唱がすごい。高い音階でこぶしで効かせてストンと落とす、アイドルの歌とは到底思えないくらいに。 「yearing」は『bleich(青白盤)』のリード曲。 これまでを前半戦として良いだろう。

・・・

「トゥー・スィート・トゥー・リブ」はアイドルではなく、ボーカルグループとしての高さを感じずにいられない。 サビではメロディに対して、コーラスは1オクターブ高い音をあわせてユニゾンさせ、曲の奥行きを増している。 とりわけ、新メンバー倉木の存在感が「トゥー・スィート・トゥー・リブ」では発揮されている。

メンバーの中で比較的声が低い倉木が、寺田ととともフェルセットをしながらサビに入る。 高揚感を保ったままコーラスワークに酔いしれつつも、最後の部分では倉木がほぼメロディを、心で叫ぶようにして歌っている。 2番目のサビ入りから最後までを、低い声だからこその特徴を生かした名曲である。

「きらり」はとても好きな曲。 「シャンパンゴールド・トワイライト・ラグゼ」はjazzテイストにアレンジした楽曲で、『GOLDENBAUM ep.』を再録されたものであり、若干のアレンジが加わっている。 「Old Gaffer’s Confession」はむしろパフォーマンスを見て楽しむ曲。 「almsgiving」もかなり変態的なコーラスワークは健在。

そして、「assuage his disappointment」。メロウでスロウテンポで、洋楽ロックのような楽曲でさえ、自分たちの曲として歌う。メインボーカルとなるのは、寺田だった。小川花という不動のセンターを失って、代わりにできるのは彼女しかいなかったからだ。彼女もいなかったら、この曲も今は歌われていないのかもしれないし、高い声のロングトーンを出して歌える歌唱力は、ボーカリストとしての片鱗を感じる一曲である。と同時に、こういう曲を歌うことができるグループであるということを、再認識させられる

「レディ・ファーイースト(極東淑女)」、こちらも再録。体が自然と動く、スカは本当に偉大なのだけれど、「assuage his disappointment」の後に持ってきたのは、ある意味勇気のある決断とともに、「音楽に遊ぶ」ということを体現している。 「ソプラノ・オーバードライブ」はライブ定番曲。 「春夏秋冬」はライブでもあまりやらないが、これまたいい曲。 そして「国王」。ボーカルがないこの曲は、恵比寿リキッドルームで披露された。

・・・

1stフルアルバム『Hauptharmonie』は楽曲の良さに注目されがちであるが、2ndフルアルバム『Herz über Kopf』は、楽曲の良さだけにとどまらず、アイドルとして重要な要素となる歌の部分にも注目すべき、そして言い換えれば彼女たちの成長の軌跡を感じられる一枚となっている。正直なところ、アイドルは"こんな歌"を歌わないし、歌えない。寺田と同じく初期メンバーの相沢光梨が、

音楽に勝ちたいよね、アイドルとして*1 <<

bounceのインタビュー内で述べたが、一方でリスナーからしたらその言葉に誤りがあるとすら錯覚する。 ダンスと歌唱力はアイドルにとって重要な要素であるが、歌唱力は2年間の積み上げによって、その実績を『Herz über Kopf』で証明されている。

いい楽曲が用意されているアイドルはたくさんいる。 しかし、いい楽曲を超える歌唱力を持ったアイドルはいるだろうか。

歌唱力という武器を手に入れた彼女たちが、白いロックへと回帰するのか、それとも別の色に染まっていくのか。 5th ep.の発売も予定しているとのことで、今後にも期待を持てる一枚となっている。

*1:タワーレコードbounce』(393号)、51頁。

Hauptharmonieの好きな10曲

僕は楽曲派だといつも言っていますが、むしろそう言わざるを得ないくらいに曲が素晴らしすぎるっていうのを伝えたいと思ったので超主観的なやつ書きます。闇のハウプトハルモニーも好きだけど、白の方が好きなのでそっち寄り。では。

1.Anne Hathaway's Morning /『bleich(青白盤)』 昔からポップンミュージックの人だったので、常盤ゆうさんいるrisetteしかり、現代の渋谷系サウンド継承者の北川勝利さんだったりが好きな人は絶対いいと感じる曲。シンプルな音作りにおしゃれなギターポップ、英語歌詞がより曲としてのクオリティを高めて良いです。

2.Reden ist Silber, Tanzen ist Gold /『OLDENBAUM ep.』 音楽に遊ぶ、の名ふさわしい、ほんと好き勝手にやってるなーいいぞって思える曲。明るいスカっていいよね♪って思ってたら、「これも一面なだけ」っていうのを後々、アルバム買って聞いて知ったっていう。 6人組になってからやってるのを聞かないから、やってほしいなあと思いつつ。

3.映ゆ / 『Hauptharmonieアルバム収録曲のド頭でこんなカッコイイギター音鳴らされたらたまらんです。 何この渋谷系アイドルグループやばいこれってなった。

4.(the garden was alive with) all sorts of flowers / 『Hauptharmonieで、「映ゆ」の次にこの曲。疾走感がたまらない。 4ヶ月前のぼき「え、これアイドルですよね?」 いやほんと、今でもこの(これら)曲を歌ってるのがアイドルって思えない。

5.瞬きのsummer end / 『Hauptharmonie聞けば聞くほど、エモい曲。 シトシトとした音楽に、歌詞に感情を込めて歌っているのがすごく伝わってくる。 聞けば聞くほど、好きになる曲。

6.Love likes a mille-feuille / 『Hauptharmonieピアノかっこいい、ベースかっこいい、ドラムかっこいい、SEかっこいい。 珠乃ちゃん、花ちゃんの声が特に映えるなーって思ってます。

7.Kidnapper Blues 〜人攫いの憂鬱〜 / 『Abenddaemmerrung(赤黒盤)』 いやいや、僕はおしゃれなギターポップが好きなんだ、こんなスカでパンクでファンクで転調激しくて予定調和なんてなくて狂いそうな曲なんか、超好きになってしまいましたヤバイよこれ頭おかしい。かなり攻めまくってて、個人的にかなりヒットしてる。

8.きらり ※未収録曲 アイハラ推しではなくて、というかハルモニは箱推しなので個人に対する想いは一緒のつもりなんだけど、「今は会えないけど大好きな人」っていう歌詞、初めて聞いたのもアイハラがいた時でアイハラエミの曲だったんじゃないかって思ってる。とはいえ、今のハルモニーに歌ってほしい。きゅんとくるけど、名曲。

9. ソプラノ・オーバードライブ /『bleich(青白盤)』『Abenddaemmerrung(赤黒盤)』 ハウプトハルモニー唯一のアイドルソング(?)だと思っています。 明るくて、楽しい、心が踊るし、合いの手を入れやすいし、コールも入れやすい。と言っても、やっぱりハルモニーらしさもあって、つまり好きってこと。

10.パラレルワープ ※未収録曲 疾走感あるドラム、ピアノ。 サビの格好良さはともかくヤバイに尽きる。ロッキンでやってほしい、地下アイドルから、もっとメジャーなところでパフォーマンスしてほしいって思ってます。願わくば生音で!!

以上。絶対みんなライブ行こうな!!

Hauptharmonie,『たそがれたかこ』,そして僕

2015年12月20日,僕は出会った。 「仲睦まじく行儀良く,音楽に遊ぶ4人組」という名にふさわしく, 洗練された音楽に身体をあずけて,声を響かせる。

彼女たちの音楽的方向性はSKAであり,ギターポップであり,ポストパンクであり, シューゲイズであり,エモーショナルロックであり,「何でもあり」ではない, いわゆる「そっち向け」に作られたものである。 間口の狭い,聞く人も少ない,そんな音楽を,売れなければ続けられない「アイドル」という世界で, 「そっち向け」の素晴らしさを最大限に引き出し,自由に楽しく歌い踊る。

彼女たちの存在を知り,気になった僕は,下北沢のライブハウスに向かう。 猥雑で,だけど活気があって,カレー屋さんが意外と多い音楽の街,下北沢。 そんな場所で,彼女たちは今日も自由に楽しく歌い踊る。

僕は好きになった。 ずっと,応援したいと思った。

この気持ちは,恋なんかじゃない。 けれど,例えるならば麻薬のように,快楽に溺れ続けるように,ずっと浸っていたい。 そしてたくさんの人に聞いてもらいたい。 そういう気持ちなんだと思う。

下北沢を後にし,京王井の頭線で渋谷に向かう。 目的地はもちろん,タワーレコーズだ。 "No Music, No Life?"というフレーズは,多分今の僕にぴったりの言葉だ。 僕はお店に入った。

ふと目にした『たそがれたかこ』というマンガ。 家に帰ってKindleで読んでみた。

話のあらすじはこうだ。 45歳バツイチの中年女性・たかこ。 白髪の混じる黒髪,活力を失った顔,繰り返しの毎日を過ごす日々。 彼女は「ナスティインコ」のボーカル・谷在家光一の歌声に恋をした。

髪の色を明るくし,今まで着たことのない服を着て。 色褪せていたいた世界が変わっていく。 自分が変わっていくことで,世界は色づいていく。

誰かをきっかけに,人は変われる。 何かをきっかけに,人は変わっていける。 それは,年齢には関係なく。

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可笑しい話だ。 たかこは僕のようだ。 それは運命が巡り合わせたよう。 彼女たちのライブを見た日に,そんなマンガを読んだのだから。

クソみたいなこんな世界でも,素晴らしい音楽と,それを創ろうとする人たちがいる。 クソみたいなこんな世界でも,素晴らしい音楽と,それを表現しようとする人たちがいる。 クソみたいなこんな世界でも,素晴らしい音楽で,それを誰かに伝えたい人たちがいる。

そして,クソみたいなこんな世界でも,音楽を愛する人たちがいる。

Ich liebe Musik.

なぜ僕は円盤を買うのか―円盤を買う基準について―

気になるつぶやきが流れてきたので,以下の問題について“主観的な意味”において考えてみたいと思います。

https://twitter.com/ohagi23/status/559332723773284352:twitter

**円盤を買う動機―作品が好きだから―  一般的に財やサービスを購入する動機として,それを得ることで何かしらの欲求や快楽が満たされるからである,と言えるでしょう。そして,「作品が好きだから」というある意味純粋な欲求を,「所有」という形式で満たすことが考えられます。  これは円盤商法と言われるような,アニメのBD(DVD)にイベントチケット優先申込券が付いてくる円盤を買うだけでは説明できない現象です。なぜなら,なぜ全巻を揃える必要があるのかという疑問について,円盤商法だけでは説明がつかないからであります。  たとえば僕は『かみちゅ!』や『アスタロッテのおもちゃ!』,『青い花』といった作品のBD-BOXを買いましたが,これらはイベントチケット優先申込券が付いてきません。あるいは最近だと『ぎんぎつね』や『未確認で進行形』など,こちらはイベントチケット優先申込券が付くようなものでしたが,これらは全部揃えました(『ヤマノススメ セカンドシーズン』も付いてきますが,これも全部揃える予定です)。

**作品が好きだから…という購入動機をさらに考える  しかし作品が好きだから,というレベルであれば僕は他にも好きな作品はあります。たとえば『さくら荘のペットな彼女』や『僕らはみんな河合荘』,『ばらかもん』,『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』や『戦国コレクション』などたくさんあります。  ではなぜこれらを所有しようとは思わなかったのか。これはかなり個人的な問題ですが,(1)経済的な問題と時期が合わなかった,(2)それが所有するに相応しい作品かどうか,という二点から考えたいと思います。

***(1)経済的な問題と時期が合わなかった  社会人になると,学生時代よりも自由に使えるお金が増えます。しかしAmazonだと25%オフで安く買えるとしても,1クールで買える円盤の数はやはり限界があります。  30分1クールの作品だと,すべて揃えようとしたら安くても3万円ほどのお金がかかります。もし毎クールごとに1作品買うとしたら12万円,毎クール2作品買うとしたら24万円かかります。月に1〜2万円の出費は,いくら社会人でお金が自由につかえると言っても,相当な出費だと思います。  そして1クールのなかで甲乙つけがたい作品が出てきた場合,どれかを買わない選択をしなければなりません。2014年の夏クールアニメは先述した『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』や『ばらかもん』,『僕らはみんな河合荘』,『ヤマノススメ セカンドシーズン』が競合していたため,泣く泣く『ヤマノススメ セカンドシーズン』を選択することとなりました。  話をまとめると,僕の手元に残った作品とは,予算制約があるなかで最も効用を満たす財を選択した結果であるともいえます。しかし,所有欲を満たすためにはもう一つほど条件がありそうです。それが,所有するに相応しい作品かどうかです。

***(2)それが所有するに相応しい作品かどうか  以上の挙げてきた作品とはまた別に,2014年夏クールアニメで一番面白かったと思う作品は『ハイキュー‼』でした。僕は中学生のときバレーボール部だったのと,躍動感あるアニメーションや個性あふれるキャラクターはそのクールで一番であったと思います。  しかしそれが所有するにふさわしい作品かについては,また別問題であると思っています。なぜなら手元において,何度も何度も,たとえば10年後や20年後も見たい,見せたい作品であるかといったら,そうではない作品だってあるからです。たとえば『魔法少女まどか☆マギカ』や『ガールズ&パンツァー』も,自分のなかではそうかもしれません*1。  なぜこのようなことが起こっているのかというと,所有という行為に意味を見出しているからだと思います。所有するということは,誰かに貸し出すことも出来るし,形として手元に残るものだからです。そしてその作品を忘れないでいようとする意志が,所有という行為そのものにあるのではないかと思うのです。  もちろん経済的な意味では2期3期への期待を込めて,制作委員会に「いい作品を作ってくれてありがとう」という感謝の気持ちを表していることもあります。

 あくまでこれは僕個人の“主観的な意味”において,円盤を買うとはいかなる行為なのかという説明にすぎません。誰もが僕と同じように円盤を買っているとは思いませんし,円盤を買わなくても作品を愛することは可能だと思います。けれども,円盤を買う行為は結果として所有へとつながります。そのため,なぜ円盤を買うのかという問題は,なぜ円盤を所有しようと思うのかという問題も含めて考えるべきものであるのかもしれませんね。

かみちゅ! Blu-ray BOX

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ヤマノススメ セカンドシーズン1巻  (イベント参加優先購入抽選券付き) [Blu-ray]

ヤマノススメ セカンドシーズン1巻 (イベント参加優先購入抽選券付き) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: アース・スター
  • 発売日: 2014/09/26
  • メディア: Blu-ray

*1:とはいえBDにちゃんと焼いている作品もあるので,積極的に所有したいとは思わない作品という言い方がよいのかもしれません。

2014年アニメOP10選

 みんながやってるから,というよりは紹介したい作品があるため初参加。  ではやっていきましょう。

彼女のフラグがおられたら:「クピドゥレビュー  スイングジャズ調の楽曲に悠木碧さんのウィスパーボイスが合います。映像もカラフルなので,聞いているだけで幸せになれる感じがあってとても良かったです。 悠木碧さんのライブに行きたいと思いましたね。

普通の女子高生が【ろこどる】やってみた:「ミライファンファーレ」  かっこいいギターソロ!から始まって,そのほかの箇所でもいろいろと主張しているエレキギターや,ファンファーレよろしくトランペットの音を調和させ支えている優しいアコースティックギターの楽器群に負けない二人の歌の強さとは一体何なのでしょうか。  Aメロはそれぞれのパートで個性を出しながら,Bメロでは奈々子を演じる伊藤美来さんのあとに縁を演じる三澤紗千香さんが輪唱をして支えているように歌い,サビ前のBメロから力強いユニゾンになって一気にサビへ行くという構成になっています。このあたりから流川ガールズのユニットとしての強さみたいなものを感じられますね。

ゴールデンタイム:「The♡World´s♡End」  前期OPとは一変,心をぐらぐらさせるようなストリングスと,疾走感のあるドラムに堀江由衣さんの声が加わって,とても不安定に感じるこの楽曲となっています。恋愛をテーマにした本作にも非常にマッチしており,サビの部分で走りながら涙を浮かべる香子のシーンは,この物語の終末を予期させる,つまり万里との恋が破局を迎えるのではないかと思わせるものとなっているあたりも心憎くて飛ばせません。ちなみに2番からはドラムがドコドコドコドコから,普通の8ビートを刻むようになり変化が生まれているのでこの違いも面白い。

ヤマノススメ セカンドシーズン(前期OP):「夏色プレゼント」  石浜真史さんの映像ってほんとセンスがあって好きです。見た時から虜でした。やっぱりアニメは表現の可能性を感じさせるものじゃないとダメなんだ!ポップさとか,スタイリッシュさとか,そういった職人気質的なものも含めて,見ていて楽しいと感じさせるものじゃないと。

ヤマノススメ セカンドシーズン(後期OP):「毎日コハルビヨリ」  「夏色プレゼント」から秋のにおいを感じさせる曲調となった楽曲。落ち着いた曲に代わっても作品の良さを損なわないOPのセンスに脱帽です。歌詞に対して映像がちゃんと応えていて,「見ればすべてわかる」と言って見せても,その伝わるのがいいですね。

人生相談テレビアニメーション「人生」:「凸凹解決せんせーしょん」  中毒性のあるスルメ曲枠。OPの映像は特筆すべきところはないのだけど,「No, no!」,「Yes, yes!」の歌詞と映像を合わせるところとかは,結構好きかもしれません。この曲をきっかけに乙女新党のCDを買いました。

デンキ街の本屋さん:「齧りかけの林檎」  亀田音楽専門学校ゴスペラーズをゲストに迎えハーモニー(ハモ/コーラス)をテーマにした回がありました。その回を視聴した後だと,竹達さんのこの曲がかなり戦略的に作られていることがわかります。以下,サビを抜き出して解説します。

あまくて切ない わたしのココロ 齧って逃げた子 だーれだ ゆらゆら揺れてる 私のココロ 恋する気持ちは 齧りかけの林檎」

Bメロの途中からハモがかかってきて,サビへと移行するのですが,このときにハモは主旋律より低い音で歌っています。赤字になっているのはハモがかかっている部分で,それ以外はユニゾン(同じ音)ですね。この低い音でハモをすること,すなわち主旋律との音の高さから離れてハモをすることによって,歌詞にあるような不安な気持ち,不安定さを奏でてキュンとする楽曲になっているかと思われます。

ばらかもん:「らしさ」  ジャーン↓,ジャーン↑とギターを鳴らした後に,「自分らしさって何だ?」という歌詞がとても象徴的。また2番のCメロにあたる「個性を出さなきゃいけない そういう流行りの無個性で 悟ってように一歩引いた 匿名希望の傍観者」という歌詞など,一曲を通して『ばらかもん』のテーマとして描かれた,半田先生の個性をめぐる葛藤を歌詞に込めていて相乗効果で感動を呼び起こします。

僕らはみんな河合荘:「いつかの、いくつかのきみとのせかい  爽やかなキーボードが鳴り,澄んだtowanaさんの声が映像に非常に合っています。とくにサビ部分では,歌詞が「いつかのきみのセカイ 僕にも見せてよほら今」とあって,本が飛び交い,りっちゃんの衣装が次々に代わる映像を見ると,歌詞と映像をしっかり合わせてきたなという制作者の意図がしっかりと見える作りになっています。「きみのセカイ=りっちゃん」を見ている「僕=宇佐くん」という図式を映像にしているかと思われます。 それから,「胸が締め付けられる」という歌詞に,宇佐くんとりっちゃんのツーショットのシーンも憎いですね。

未確認で進行形:「とまどい→レシピ」  「あぁどうしよ」と小紅が目を伏せながら顔を赤らめるシーンで萌え死んだのが僕でした。本当にありがとうございました。  今回の記事のためにこのOPの映像は20回くらいは見直しているのですが気づくことはやはりあって,それは動画工房はただ単に巨乳安産型の夜ノ森小紅さんのおっぱいを揺らしたいだけではないのがわかります。  たとえば「どうして私なんだろ」という歌詞のあるシーンでは,小紅が不思議そうな面持ちで視聴者の方向に向くのですが,このとき隣にいた紅緒と真白はフェードアウトし小紅だけになり,「あぁどうしよ」のシーンへとつながります。そしてサビのシーンでは,一人だけぽつんと立っている小紅にところに白夜だけがたどり着きます。つまり,小紅の許嫁である白夜をきちんと肯定しているというのがこの映像から読み取れるということに他なりません(ちなみに紅緒は小紅のところに近寄ろうとするのですが,撫子に拉致されます)。  ほかひいき目に見れば,このキャラクターはこんな性格だ!というのが映像を見ていると伝わります。宙に浮かんだシーンだと,まゆらは楽しそうにしてるし,仁子は宙に浮かんでいることに面白がって写真を撮っています。紅緒は宙に浮かんでいる状態なのに小紅を求めて手を伸ばし,撫子は冷静に紅緒を拉致している。真白とこのはは慌てている様子が描かれています。このあたりからも良く出来ているなと感心せざるを得ないのです。  そして「ふぅふぅ らったった らったったった〜」と面白い歌詞にリズミカルなドラムとパワーコードをかき鳴らすギターでありながら,なぜかちょっと切なくなるような感じを受けるのは,「みかくにんぐッ!」の照井春佳さんの発声,声質が特徴的であり,フレーズの終わりは前の音に対して音が下がっているためそのように感じさせているのではないかと思われます。譜面(ことメロディ)に関しては以下の動画を参考にしてほしいのですが,「恋心はいっ↑ちゃっ↓た↓」,「あぁ↑どう→しよ↓」,「なんて非→日→常→的な↓レボ↓リュー↑ション↓」など,フレーズの終わりは一音ないし二音下がっています。この節目節目に一音ないし二音下げることよって,突き抜けられなさのようなものを,すなわち「とまどい」を音から表現しているのではないでしょうか。

未確認で進行形 OP】 とまどい→レシピ (TV.ver) 【Guitar TAB】:

 以上,『未確認で進行形』のOPについて語りたいがために勝手にこの企画に乗りました。ご紹介した楽曲のなかで気になるものがあったら,ぜひ購入して聞いてあげてくださいね。

 あとお前OP選と言っときながら映像に触れてねーやつあるじゃんとか言うのなしな!