はじめて見る人でも安心―『ちはやふる2』の面白さの秘密

　2013年冬クールも終盤に差し掛かりました．今期視聴しているのは『ラブライブ』『琴浦さん』『まおゆう』『gdgd妖精s（2期）』『僕は友達が少ない（2期）』『ビビットレッド・オペレーション』『あいまいみー』『ヤマノススメ』『まんがーる』『たまこまーけっと』etc...と，それなりにチェックしております（前クールより視聴継続作品もあるので，15本以上は見ているはず）．その中でも一押しなのが，『ちはやふる2』です．

すみれちゃんという視点―競技かるたを知らない人たちにやさしい工夫　2期ということもあって，主人公の綾瀬千早が2年生になり，新入生勧誘を始める時期から物語が始まります．ここで，「競技かるた」というマイナな競技をテーマにしたアニメだということを2期から見始める視聴者は知っていても，そのやり方／ルール／楽しさは知らないものと仮定して，話を進めましょう．　千早と同じかるた部の真島太一に一目惚れした花野菫（以下すみれちゃん）という人物，彼女こそ『ちはやふる』から『ちはやふる2』への架け橋となるキャラクターとして描かれています．というのも，彼女は”ぼくら（＝視聴者）”と同じ競技かるたのルールを知らない人物であり，競技かるたの楽しさを知らない人物であり，競技かるたの世界を知らない人物だからです．つまり，「すみれちゃん＝”ぼくら”」として描かれるからこそ，彼女という視点を通して”ぼくら”も競技かるたの楽しさを理解することができるのです．　たとえば，同じく新入部員の筑波秋博と実践形式の練習をしたときに，彼女は競技かるたの楽しみに気づき，そして千早から次のような言葉をかけられます．

いま初めて１枚取れて嬉しかったでしょ？　だんだん早く取りたくなるんだよすみれちゃん <<

　瑞沢高校かるた部員たちの，競技かるたへの熱意に動かされ，すみれちゃん自身も競技かるたに打込んでいきます．もちろん，太一への想いも大切にしながら．　このように，すみれちゃんという「新参者」の登場が2期から入った人へ競技かるたの楽しさを理解させるための「道案内役」となっていると思われます．繰り返し言えば，「すみちゃん＝”ぼくら”」という図式は，”ぼくら”が競技かるたという知らない世界を探検するために必要であり，すみれちゃんなしには2期から入った人には楽しめない，とも言えるキャラクターであると言えます．

はじめて2期を見る人にハードルを下げるためのポイント　特筆することはないのでメモ程度に少しだけ記しておきますが，アニメに関わらずシリーズ化される作品の場合はよく「新参者」が登場します．例えば，「おジャ魔女どれみ」シリーズだとモモちゃん，「実況！パワフルプロ野球」シリーズだと橘みずき／六道聖*1，「ひだまりスケッチ」シリーズだと乃莉となずな*2とか，それなりにあったはずです．もちろん登場しない場合もありますが，ここで登場する彼女たちによって視聴者／プレイヤーの心理的ハードルが下がるという効果が期待できます*3．　ある集団へコミットする場合，やはり自分の考え方，価値観とは違うわけで，もちろんその集団の価値観とすりあわせていく必要があるにせよ，最初からこの世界はこうだ，だーん！っと見せられるとキツイってことはあるわけです．多分その典型は『ミルキィホームズ』や『ゆるゆり』が顕著に思われますが，ああいった箱庭的な作品群はその世界の不文律を知っていれば楽しめるが，知らないと楽しみづらいという性格を有していると思われます（もしかしたら「ジョジョ」シリーズもそうかも）．　それを踏まえると原作『ちはやふる』はマンガ大賞（2009）にノミネートされたり，『このマンガがすごい』オンナ編1位（2010），講談社漫画賞少女漫画部門受賞（2011）と話題を集めた作品であり，一般的知名度からして知っておいて損はない作品であること，あるいは少女マンガの絵柄であるがため萌え絵を受け付けない人たちへの抵抗が少ないことなどから，心理的ハードルは下がっており，さらに２期から見る人たちにもすみれちゃんという”ぼくら”がいます．このことから，『ちはやふる2』を”見ない理由”の理由が見つからないはずで，もはや録画に，あるいは『ちはやふる2』はいつやっているのか番組表をチェックするという行動をこの記事を読んでいるあなたは行っているはずです．つまり，そういうことなのです．