思考実験室

日々のつれづれ

Hauptharmonie,『たそがれたかこ』,そして僕

2015年12月20日,僕は出会った。 「仲睦まじく行儀良く,音楽に遊ぶ4人組」という名にふさわしく, 洗練された音楽に身体をあずけて,声を響かせる。

彼女たちの音楽的方向性はSKAであり,ギターポップであり,ポストパンクであり, シューゲイズであり,エモーショナルロックであり,「何でもあり」ではない, いわゆる「そっち向け」に作られたものである。 間口の狭い,聞く人も少ない,そんな音楽を,売れなければ続けられない「アイドル」という世界で, 「そっち向け」の素晴らしさを最大限に引き出し,自由に楽しく歌い踊る。

彼女たちの存在を知り,気になった僕は,下北沢のライブハウスに向かう。 猥雑で,だけど活気があって,カレー屋さんが意外と多い音楽の街,下北沢。 そんな場所で,彼女たちは今日も自由に楽しく歌い踊る。

僕は好きになった。 ずっと,応援したいと思った。

この気持ちは,恋なんかじゃない。 けれど,例えるならば麻薬のように,快楽に溺れ続けるように,ずっと浸っていたい。 そしてたくさんの人に聞いてもらいたい。 そういう気持ちなんだと思う。

下北沢を後にし,京王井の頭線で渋谷に向かう。 目的地はもちろん,タワーレコーズだ。 "No Music, No Life?"というフレーズは,多分今の僕にぴったりの言葉だ。 僕はお店に入った。

ふと目にした『たそがれたかこ』というマンガ。 家に帰ってKindleで読んでみた。

話のあらすじはこうだ。 45歳バツイチの中年女性・たかこ。 白髪の混じる黒髪,活力を失った顔,繰り返しの毎日を過ごす日々。 彼女は「ナスティインコ」のボーカル・谷在家光一の歌声に恋をした。

髪の色を明るくし,今まで着たことのない服を着て。 色褪せていたいた世界が変わっていく。 自分が変わっていくことで,世界は色づいていく。

誰かをきっかけに,人は変われる。 何かをきっかけに,人は変わっていける。 それは,年齢には関係なく。

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可笑しい話だ。 たかこは僕のようだ。 それは運命が巡り合わせたよう。 彼女たちのライブを見た日に,そんなマンガを読んだのだから。

クソみたいなこんな世界でも,素晴らしい音楽と,それを創ろうとする人たちがいる。 クソみたいなこんな世界でも,素晴らしい音楽と,それを表現しようとする人たちがいる。 クソみたいなこんな世界でも,素晴らしい音楽で,それを誰かに伝えたい人たちがいる。

そして,クソみたいなこんな世界でも,音楽を愛する人たちがいる。

Ich liebe Musik.